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回転は迷宮への路 その2:ジンバルロック現象を理解する
2025年11月:リニューアルしました戻る デジタル降魔録へ 次へ
前回で回転のさわりをやりました。今回は 回転システムに翻弄された数年前を振り返りつつ、一新された脳みそで説明させていただきます。
なにしろ初めて目の当たりにした摩訶不思議で意味不明な動きに翻弄されて、それがジンバルロック現象と呼ばれる特異点だったと、自力でたどり着いたときには疲れ果て、そんな血迷った状態で説明しましたので、たぶん支離滅裂だったと思います、
今回はちょっと違うはずです……(たぶん)。
まず前回謎を含んだまま終わった、"属性マネージャにある H,P,Bの数値を変えて回転させたときと、回転ツールを使って回転させたときでは動きが異なる" という意味と、先ほど出てきたジンバルロック現象の説明を始めます。
この動画を見てください。
ジンバルロックの始まり
あきらかに属性マネージャのH,P,Bの数値を変えて回転させたときと、回転ツールを使って回転させたときでは動きが異なっています。これがジンバルロック現象です。
この現象を簡単に説明しますと、C4d Lはオイラー角で回転を決めているからです。
オイラー角を説きだすと頭から煙りが出ますので、簡単に説明します。
まず、回転の軸はおおもと(ワールド軸)の x,y,z軸を中心に回転している、と考えると昔のワタシのように脳みそが爆発します。オブジェクトは OMで階層構造となって親子付けになるため、回転させるときはオブジェクト自身のローカル軸が基準になります。
ここまでは当たり前のことを説明していますので、問題ないと思います。次です。
このローカル軸の回転は Y軸回転だと思っていても、上の階層のオブジェクトが回転していると、その回転軸も傾いているために意図しない方向、たとえば鉄棒で回るように前後に回転したりします。このように回転は座標の移動とは異なり直感的に理解しにくいためとても混乱するのですが、それ以上に混乱するのがジンバルロックです。先ほどの例のように階層になっていませんが、それでもジンバルロックが発生しています。
この理由は、 "非可換" という数学的性質を持つもので、オブジェクトの回転が成り立っているからです。
掛け算や足し算のように逆に計算しても答えは変わらないものは "可換" と呼ばれますが、回転の場合は異なります。
次の映像をご覧ください。
y軸を中心に 90°回転させてから、x軸を中心に 30°回転させたのと、その逆に x軸を中心に 30°回転させてから、y軸を中心に 90°回転させたのでは結果が異なっています。
つまりオイラー角で回転をコントロールすると、このように意図しない結果が生まれるために x,y,z回転と単純に呼ばずに、 H,P,B回転という特定の呼び方で、その意味をを明確にしたのです。
y軸回転は『H』、"Heading" と呼び。水平回転。回転ツールのバンドは緑色
x軸回転は『P』、"Pitch"です。鉄棒のように前後に回転。バンドは赤色
z軸回転は『B』、『Bank』になります。側転のように横回転。バンドは青色
そして回転順序も連動します。
・H軸は親のY軸を基準にしていて、Pも B軸も動く。
ここが重要です。親が傾いていると Hは意図しない方向に回り(水平回転とは限らない)、それが他に影響する。
・P軸を動かすと B軸は動くが、H軸は動かない。
・B軸を動かしても Hと P軸も動かない。
H→ P→ Bの順序で回転が適応されるので、先に動かした軸が、後に続く軸の向きを決定するという連動した動きになっています。
といわれても、ここで大きな壁にぶち当たります。この動きを理解するには、通常の回転表示のままではいつまで経っても理解できないからです。
次の映像をご覧ください。
ジンバルロックの始まり
全然そのとおりにはなっていないことが分かりますね。
『B』回転させても、『H』回転させても同じ結果、その場で水平な方向にしか回転しません。ドラム缶を転がすように緑色のバンドをドラッグすると、回転の数値がむちゃくちゃになって、キーフレームを打つと、想像していた回転ができなくなります。
しかも肝心の H→ P→ Bの順序で回転が適応されるなんて微塵も見られません。全部が同時に動いています。
これは、直感的に理解しやすい回転の表示になっているだけで、裏では先に書きました H→ P→ Bの順序で回転が適応されています。それが原因で理解に齟齬が生じているのです。
この挙動がペーペーの時代には全く受け付けられませんでした。しかし制作回数を重ねるほどにこの表示方法が理解できます。ある事柄だけに注意しておけば、この方法が回転をイメージするのにぴったりで、直感的に分かりやすいからです。
ではこの変な現象をさらに深堀していきましょう。
ある事柄に注意とは何か、またなぜこのようなことが起こるのか。その原因は次の映像で明らかになりますが、先に種明かしをしておきます。
それは『P』を特定の角度まで回転させていくと、『B』の軸と『H』の軸が一本の線上に重なってしまい、回転の自由が失われているからです。この現象こそがジンバルロックと呼ばれています。
そして通常の回転軸を使った回転ツールでは、これを回避するためのつじつま合わせのために、あのように H,P,Bの内容が細かい数値に変化したのですね。
その状況を見るには今の回転表示では不可能です。そこで次の映像ではジンバルロック現象を目の当たりにできるようにしています。これを利用すればジンバルロックに陥りそうな状況が先に読めるために、回避策も取れるかもしれません。
ジンバルロックを察知する
C4d Lに【ジンバル回転】という表示方法があるとは知りませんでしたが、これでもう怖いものなしです。ヤバそうになる前に察知できますから。
ぜひ実際にジンバル回転に切り替えて、 H→ P→ Bの順序で回転が適応されている様子をご覧になってください。霧が晴れるように回転の呪縛から解き放たれる気がしますから。
【回避策】
ジンバルロックは必ず起こるものと考えて、キャラクターアニメーションでそうなったときの回避策として最も効果的で実用的な方法は、階層構造にして子階層と親階層とで、分けて回転のキーフレームを打つとほぼ解決します。例えば子階層では『P』と『B』の回転だけ、『H』回転は親の階層で行うなどが適しています。そして『P』回転を行った結果『y』軸が傾むくと『H』回転の軸が『B』回転の軸に近づきますので、そう感じたらジンバル回転表示に切り替えて、ジンバルロックに近づいているかどうかを確認します。
先ほどの【ジンバルロックを察知する】するという映像では『P』赤色のバンドを必要以上に傾けたため、『B』青色のバンドも連動して傾き、緑の『H』の角度に近づきすぎてしまい、『B』も『H』も同じ向きにしか回らなくなっていたわけです。
さあ、これで回転の迷宮から脱出できたでしょう。
でものんびりはできません。なにしろこの先には、マテリアルの魔宮が待っていますから。